2022.11.15

所有者不明土地問題に係る法改正措置

いくつかの相続を経る中で、相続人が取得した土地の登記を怠った等の理由により、所有者が不明である土地や建物について、これらが未利用のまま放置され、防災や衛生、景観など周辺環境の悪化を招き社会問題化しています。
この問題は、まず所有権の登記が任意である事により放置されてしまう事が、問題の根幹であり、さらに我が国の所有権が他国に比して極めて強固な権利であるが故に、このような土地や建物の権利に対して行政が容易に介入できない事が要因として挙げられます。そこで、このような問題に対応すべく、近年、いくつかの法律が改正・創設されているので紹介いたします。

1.相続土地登記の義務化
不動産登記法の改正により、令和6年4月1日以降の相続登記を義務化することになりました。

2.住所氏名変更登記の義務化
不動産登記法の改正により、登記名義人が住所や氏名を変更した場合の変更登記が義務化されることになりました。本改正については、令和8年4月28日までに施行されます。

3.相続土地国家帰属法
相続した不要な土地を、国が引き取る制度を設ける事で、当該不要土地の放置を抑止し、所有者不明土地の発生を防止することとした。この制度は令和5年4月27日から開始されます。

4.所有不動産記録証明制度
特定の被相続人が所有権の登記名義人として登記されている不動産の一覧の交付を請求できる制度が創設された。

5.相続登記における登録免許税の免税制度
令和7年3月31日までに発生した相続について、過去の相続登記が失念されていた部分については、免税措置を講じ、最終の所有者の登記にかかる登録免許税のみで完了することとされました。これは、例えば曾祖父→祖父→父→本人(今回の相続登記義務者)のような場合において登記簿謄本の所有権の欄に曾祖父が記載されていた場合、
祖父及び父が相続した際に相続登記をしていなかった事になり、従来であれば「本人」は過去分と今回分を併せて3回分の登録免許税の負担が必要であったが、免税措置により1回分で登記できる事となりました。

【まとめ】
今回紹介したのは、登記関連の改正や新たな制度の紹介となりますが、税制においても、「低未利用地に対する特別控除」や「空き家譲渡特例」など所有者不明土地問題に対応する措置が講じられております。
現時点では問題解決のために該当者に対して「アメ」を与えるかのような改正や制度が多いですが、平成27年から施行されている、空き家に対する固定資産税の増税(住宅用地に係る特例の不適用)など今後「ムチ」となる改正などが予想されます。

いずれにしても、相続が発生した場合において、相続人は、故人が所有していた不動産の把握と適切な登記が求められる事になります。